10年を経て読んでなお新鮮な現場ルポ

今から10年前の2007年、ジャーナリストの安田さんはクウェートに行き、紆余曲折を経て(その過程で、インド人も「アメリカ人は味なんかわからないからたくさん食わせておけばいい」と考えていることがわかるなど、なかなかコミカルです)、2003年以降、米軍などの多国籍軍が占領してきたイラクに労働者として入ることに成功しました。日本人は世界市場において「安い労働力」になることすら難しいという視点は、なかなかに厳しいものがあります(実際にそうなのですが……グローバル経済のもと、日本人は単価で負けてしまいます。それはおそらく所謂先進国に共通した問題で、それゆえ「アメリカ第一」のようなキャッチフレーズが共感を得るのでしょう)。 何とか仕事を見つけた安田さんが着任したのは、イラク中部の都市ディワニヤ近郊の陸軍訓練基地内の居住区。そこでケータリングを担当しているv社に雇われ、約30人分の食事を入手できている材料でまかなう調理人として働きます……が、元々調理人としての経験があったわけではなく、安田さんが作れる料理は読んでるこちらから見れば冷や汗ものなのですが、そのくだりも、基地内の様子の描写もとても具体的でリアルです。「黒い卵事件」など苦笑している間に、その背景にある「地産地消」の正反対の、「安ければ世界のどこからでも」というビジネス的な論理が見えてきて、ぞっとします。 職場の同僚となったインドやネパールの人たちのことも興味深いのですが(こういった人々は、湾岸諸国の建設現場などには大勢いるそうです)、イラク人のことは一層です。長らく「国家によって監視されていること」が当たり前だった彼らにとっては、サダム・フセインが消えうせてなお、「誰かによる監視」があることが当たり前です。2017年のニュースに、このことを考えます。安田さん、またこういう話を伝えてください。読者は待っていますから。