これは新たな時代のソラリスだ
最初、WEBでも読める第一話を拝見した時、街ごと移動するロードムービーかと思って楽しく読みました。
次に第二話を読んでそんな甘っちょろい作品では無いことが分かって、打ちのめされました。
街。いえ、この砂の塊らしきものは、人の心をそのまま形にする。古典名作のソラリスの海と似たような「悪気なくその人の心に向き合わせる」。
ただ、それだけの存在でした。
砂が再現するのは、記憶の中の古いアルバム。
懐かしい景色、強烈な体験、成功体験から人格形成の基礎まで、逃れられない心の墓場です。
その墓場を再利用して人が住みつき、さらに住民の思い出が、本来なら消えて二度と見なくて済むはずのものが、砂で再現されていく。
この手の題材で描くと普通はメロウな、優しい作風になるか、ホラーテイストでトラウマに迫るように「見せかける」作風になるかと思われますが、そこは鬼才町田先生。
静かに、淡々と日常を描きながら、徐々にラストのカタルシスに向けて主人公の成長の準備を整えます。
この主人公、コマをよく追うと人と目線を合わせて会話することが、ほとんどできていません。
他者と自分自身に深く向き合わないことで、さりげなく平穏を維持しているシャイな青年なんです。
その彼が、自分自身に向き合う、乗り越える、思い出を破壊して先に進む。
躊躇わずに「今」を生きて、同じように「今」を生きる他者と視線を合わせる、自分自身から目を逸らさない人間に成長できるように、物語を進めていきます。
自分の心に向き合うのは本当に辛いことです。
反面、安易に答えを出して誤魔化して安心するのは容易いこと。
でも、それをしたく無いともがき、主人公に影響を与えてくれる「彼女」。
ヒロインの存在が主人公を、「彼女」自身に向き合いたい=同じように自分の心から逃げず、自分自身を奥底まで見つめられる人間にならざるを得ない。
ところまで、主人公を追い詰めてくれます。
過去を「直視」すること。「今」を生きること。
彼らならずっと「今」を生きてくれるだろうと、私は信じています。
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