ネイサンとママの物語

分厚く相当なページ数なので、サラッと流し読む本ではないです。しっかり真剣に没入して読むべき一冊。 意外にもラファコーチの描写は少なく、ほぼほぼ「ネイサンとネイサンママ」の物語です。これほどまでに息子の才能を「伸ばし育てる」親がこの世に居るだろうか?と思えるほどのママの指導能力と情熱。驚愕します。 でも「厳しい教育ママ」という感じではないし、他の兄弟たちの教育にも、パパも一緒に情熱を注ぎ、どれだけ充実した一家なんだ!?と。アメリカン・ドリームってこれぐらいのパワーが必要なんですね。 パパママのみならず全員優秀な兄弟の存在が、ネイサンの人格形成に大きな影響を及ぼしているな、と思われる描写が度々ありました。最初の五輪SPの失敗後、家族のサポートがなければどうなっていたことか。 「天才ネイサン」というより、「努力の人ネイサン」の印象が強くなりました。楽に勝っているように見える試合でも、実はまったくそうではなくて大変だったり。 そして、一生を左右する北京五輪の裏でそんなことがあったなんて?コーチがラファで良かったね。ラファの「ある技術」がなければ、ネイサン金メダルはなかったかも? などと、スリリングな展開も面白いです。 ネイサンの股関節が金メダルに間に合ってくれて、本当に良かった。 ママの手から巣立って、これからどんな大人になっていくのか、ひょっとしたらイェール卒業後に競技にカムバックありかも? 4Aを跳ぶマリニンが現れても、なかなかネイサンのスコアに届かないのは、ネイサンの緻密な技術と音楽表現へのこだわりがそれだけ高い評価だった、ということ。 彼には明確に「表現したいこと」があり、同時に何本ものクワドを美しく跳びたい、という意欲もあり、奇跡的にその2つが両立出来た。稀有な選手だったということでしょう。 あ、そして「衣装だけがなあ」と言われがちだったネイサンですが、なぜベラ・ウォンにこだわったかわかりました。あの衣装デザインには、ネイサンの哲学がこめられていたんですねえ。 他選手やコーチへの尊敬の念は書かれていたけど、悪口・批判は一切無し。潔く賢く、クールで大胆に見えて意外と繊細で感受性の強いネイサンを「育てた」のは、まさにネイサンママの功績なんですね。 フィギュアは幼い時から始めないと間に合わないしお金もかかるから、親の存在がいかに大きいか。痛感させられました!