諸永裕司著「消された水汚染」を読んで

帯に「汚染された井戸と横田基地を結ぶ点と線」とあるように東京の有機フッ素化合物による多摩地域の水道水や地下水の汚染問題に取り組んだ記者の実録である。一読をお薦めしたいが、失望・絶望するかも知れない。 感想を一言でいうと、この分野では「公僕は死語になった」である。 関係する役人に取材するも、記録、文書やメールがあっても隠し続ける。質問に応える役人たちの態度の変化を観察、痛いところを突かれと表情や口ぶりが一転して抑揚のない一本調子になるから、嘘や隠しが分かる。(読みながら、国会答弁する高級官僚の対象的な終始無表情が思い浮かんだ) 粘り強く、隠蔽や虚偽・言い逃れを突き破って文系の記者が科学的要素が多い問題を解き明かしたことに敬意を払いたい。そして、この物質に関係する国や自治体の行政や事業体、研究機関は本来の目的である国民の健康や環境を守るより、組織と自己の保全や利益を最優先にしていること、外圧がなければ変わらぬ後進性を明らかにした。 測定データの開示を嘘までついて拒み続けたのは関係機関に共通している。見つけた資料の開示を拒否したばかりか、近隣の市に非開示を求めた国分寺市の環境対策課長が、3ヶ月後建設環境部長に昇進したという。森友問題の佐川局長を思い起こす。市長や市議会、いや市民はこんな部長が環境担当で良いのだろうか?汚染地域の専用水道や井戸水を飲用する人に情報提供や注意できる法的根拠がないとして放置している。 厚労省が2020年に突然、有機フッ素化合物であるPFOS・PFOAを水道水水質管理の水質管理目標項目に追加、世界一厳しい50ng/Lと、検証するための文章や記録なく、形式的な審議で一課長の指示で決めれたなど、水道行政の仕組みには驚くばかりだ。 米軍基地に関しては戦争をしない日本を守ってくれる軍隊を怒らせてなならず、日米地位協定によってアンタッチャブルの存在である。あたかも借り主が「ごみを捨てても壁を壊しても元通りに戻す必要はなく、追い出されることもない。そのうえ、騒いでも火事や事故を起こしても、まず責任を問われることはない--。日本をそんな家主に例えている。嘉手納基地や横田基地近辺の汚染を米軍に結び付けぬ忖度?が自治体にまで行き渡っているのだろう。改めさせるには米国民に知らしめる情報戦略が必要とと読みながら思った。(文字制限で以下省略)