米国におけるAAの歴史的変遷(トランプ大統領再選直前まで)を、それを取り巻く政治力学やAA擁護/反対の正当化論などに絡めながら描写する。構造的な人種不平等の克服に向けた積極措置として始まったAAは、当初の政府主導の多様なプログラムから、大学・企業に主導された数値目標の設定やクオータへと収斂することで、逆差別批判を受ける。バッキ判決以降は差別是正から多様性の実現へと目的が再定義されることで、逆境の中でも命脈を保ち続けていたものの、2023年に連邦最高裁で違憲判決が下される。AAが初発の問題関心から乖離して実情に合わない政策へと転化したこと、逆差別・優遇糾弾の言説が賛否の対立を不必要に先鋭化したことがよくわかる良書。各章末にはほぼ必ずまとめが置かれているなど、とても分かりやすく書かれており、全体の流れを見失うことなく読めるのも非常に素晴らしい。最終章では原点回帰=そもそもなぜAAが必要とされるのか、そのためには何ができるのかを、不平等の交差性を踏まえつつ文脈に即して考えることを主張しているし、「おわりに」では日本にとっての含意も記されている。本書の冒頭でも指摘されているように、AAをめぐっては、AAの賛否をめぐる規範的な議論ばかりが着目される傾向があるが、そうした規範的な議論の前に読んでおくべき本。