ジャズ理論を理解するための最適本

本書は,同じ著者による名著モダン・ジャズ・ピアノ・レッスンvol.1,vol.2(ドレミ楽譜出版社)の改訂版の下巻である. ジャズ理論を扱った書物としてはMark LevineによるThe Jazz Theory BookとThe Jazz Piano Bookが有名であり,和訳本も出版されている.しかし,The Jazz Theory Bookについては,少なくとも2004年の和訳本の初版については誤訳や分かりにくい訳が多い.例えば3章にある「4thがアヴォイド・ノートとしてサウンドしないVコードは,susコードをうまく言い表しています。」で意味が通じるだろうか? 原文を見ると,A good definition of a sus chord is "a V chord in which the 4th doesn't sound like an 'avoid' note."(susコードの1つの良い定義は”4thが'アボイド' ノートとしてサウンドしないVコードの一種” です.」とあり,これなら意味が分かる.一方,The Jazz Piano Bookは良い本だと思うし,22章に現れる同じ文章は,和訳本で分かりやすく翻訳されている. しかしながら,本書は,内容が充実しているだけでなく,より分かりやすく取っつきやすいという点で,これらの本よりも優れていると思う.例えば,ドミナント・モーションをここまで掘り下げて,かつ分かりやすく説明しているジャズの理論書は目にしたことが無い. 既に旧版をお持ちの方もいらっしゃると思うが,本書では,上下巻が一体化し,相互参照にページが明示されたり,索引が追加されるなど,より使いやすくなっている.また,イラストも一新され,細部に渡る文章の見直しがされている点でも,お勧めである.