●私は本書を精神療法/精神分析に関心は持っているが,疑念やうさんくさい感じも抱いているという方に読んでいただきたいと思います。その方が精神医療や心理教育の仕事に現在従事しておられようと,そうした仕事はしていなくても知的な関心を抱いているという方でもです。そして,読み終えられたなら,精神療法/精神分析とは,決して奇才や鬼才の芸当ではなく,他の人に役に立ちたいと思っている人の平凡な月並な努力の積み重ねであると感じられるのではないかと思います。しかし,それは相手にたえず誠実であろうとする,日々に積み重ねられていく平凡な努力であることをいくらかの好意をもって認めてもらえるのではないかと私は期待しています。それから,もちろん,これから精神療法や精神分析を学びたいという方にも読んでいただきたいのです。おそらく,初めはいくらか飛躍しすぎているとかピンとこないと感じられることもあろうかと思います。けれども,しばらく経験を重ねられるなら,本書でのケースメント氏の記述がずっと理解できるものになると思いますし,本書の内容を想い起こしたり,読み直したりされることで,新たな理解や理解の深まりが育ってくると思います。私たちの世界も「言うはやすし,行なうは難し」というところがありますが,本書はその行なうための道を見出す入り口へと誘なってくれましょう。(「訳者あとがき」より)
●著者は神学を学び、ソーシャルワーカーの経験を積み、そして分析家の訓練を受けた。本書の中では、多くの臨床例を詳細に描写し、患者ー治療者関係を相互交流的視点からとらえ、患者に耳を傾け、内的世界を理解し、自己再検討を繰り返す、人間性豊かな治療関係が描かれている。
●目次
謝辞
まえがき(アーサー・ハイアット・ウイリアムズ博士)
はじめに
1 患者から学ぶための予備思考
援助するあいだがらの再検討/精神療法:パラドックスの世界/解釈の方向づけ直しの訓練/患者からのヒントへの治療者の反応性/分析と養育での3人組
2 心の中のスーパーバイザー
心の中のスーパービジョン:バランスを求めて/心の中のスーパーバイザーの成長/試みの同一化/先入観に抵抗すること:幾何学からの類推/焦点をあわせない傾聴/活動中の心の中のスーパーバイザー:応用練習/スーパーバイザーから心の中のスーパービジョンへ
3 心の中のスーパービジョンニ過ちと修復
相互交流的視点についてのあらまし/臨床素材について/セッションの背景/治療枠組みでの最近のはみ出し/そのセッション
4 相互交流性コミュニケーションの形態
インパクトによるコミュニケーション/役割ー対応性と関連している経験/投影同一化の体験/コミュニケーションとしての投影同一化/防衛的な振舞いを通してのコミュニケーション/分析での差し迫ったストレスへの逆転移反応/治療者の失敗と患者の生活史/逆転移のさまざまな側面/なにが誰に属しているのか/患者への治療者の共鳴/呈示例の再検討/強さの問題/解釈においての逆転移の利用と誤用
5 相互交流という見地から耳を傾けること:ひとつの臨床例
呈示する一週間のセッションの背景/臨床経過/この経過の余波/検討
6 含み込むことのキー・ダイナミックス
含み込むこと/含み込むことの失敗/人によって含み込まれること/洞察と解釈による含み込み/精神病エピソード:ひとつの長期臨床経過/症例の再検討
7 重圧のもとでの分析的に抱っこすること
臨床経過の背景
8 治療体験での探求と発見の過程
治療体験/患者の探求の本質/修正情動体験の誤った使い方/治療者の非侵入的な有用性/治療者の有用性を患者が利用すること/患者たちのさまざまな必要なもの/過ち,そして修正のためのヒント/助言の型/患者への圧迫がないこと/治療境界を築くこと/境界を維持すること/治療者が自分自身と関連する時期尚早の解釈をすることで侵入的になること/治療者が不適切に指示的になること/治療者に気持をわからせることの難しさ
9 空間を探して:境界について
分析への実際上の制限/家族背景/過食と関連した問題/患者は境界が必要なことをはっきり示す/境界に関連した問題点/境界を築くこと/分析家の役割についての検討/フォロー・アップ
10 理論, 再発見
付記I 知っていることと知らないこと:ウィニコットとビオン
付記II 治療者の守秘性と暴露の問題
文献/訳者あとがき/人名索引/事項索引


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