経済学史は経済議論の間違いに気がつかせる

本書のとても面白い講義を紹介する。 ●第8講「1929年世界大恐慌の真実ー『貨幣数量説と大恐慌…大恐慌の本当の原因はFRBのミスだった』」では、大恐慌の原因は、これまでの定説の「市場の失敗」ではなく、FRBが株価大暴落の前から、厳し過ぎる金融引き締めをした為。背景に、「真正手形ドクトリン」(中央銀行は投機目的ではなく、『本物の取引の必要』に応じて、受動的に、貨幣量を調節すべきだという考え方)がある。 ●第12講「ヒトラーの経済政策への誤解ー『ヒトラーの経済政策はケインズ的で大成功だった』は大嘘」では、ヒトラーの経済政策は、滅茶苦茶で、失業率が激減した理由は、女性を無理矢理、主婦にしたり、ユダヤ人や反体制派を刑務所に閉じ込めたから。また、第二次大戦前に、乳幼児の死亡率が上がった。理由は、農業政策で輸入をやめたり、保健衛生の分野に力を入れなかった為。 ●第14講「ケインズ政策の限界と転換ー『貨幣量と物価』の現代経済史…そしてスタグフレーション」」では、ケインズ政策の「過信」が、「スタグフレーション」(不況とインフレが併存する状態)が招いた。その為、スタグフレーションの対策として、●第13講「20世紀最大の経済学者フリードマンー『金融政策の復権と自由市場の重要性』」に説明があるフリードマンの「マネタリズム」(貨幣は、短期的には景気変動をもたらす主要な要因であり、長期的には物価に影響する。)が、イギリスのサッチャー政権やアメリカのレーガン政権の「金融政策」に取り入れられた。 ●第15講「3つのケインジアンとMMTの違いー『ケインジアン』の分岐とMMT?…正統と異端の見分け方」では、「MMT理論(現代貨幣理論)」の問題点は、1940年代のケインズ経済学の「財政をとにかく拡大すればいい」という主張なので、ベネズエラの「ハイパーインフレと経済破綻(巨額の財政赤字)」になる可能性がある。 ●第16講「現代の経済学のコンセンサスー結局、主流派と異端派の何が違うか…経済学史の大きな示唆」では、現代の経済学の7つのコンセンサス(意見の一致)の中で、7つ目の「短期では、マクロ経済政策(財政・金融政策)によって景気変動を緩和することができる。(ただし、裁量的な政策運営ではうまくいかない)」とある。これは、金融政策では、ケインジアンの裁量でなく、マネタリストのルールが大事であるという事を示す。