この85年盤カラヤンは銘盤である。

断言する。私は「英雄の生涯」マニアである。 はじめてエアチェック(古)したのが,カラヤンの「英雄の生涯(85年盤)」である。 CDの出はじめの頃,はじめて買ったのがカラヤンの「英雄の生涯(74年盤)」である。 飽き足らず蒐集した中古レコードがカラヤンの「英雄の生涯(59年盤)」である。 付け加えれば,自演盤は当然のこと,演奏違い,指揮者違い,同じ録音であるがCD違い(笑)など,ありとあらゆる「英雄の生涯」を集めている。 ・ で,断言する。銘盤である。 原題Ein Heldenlebenは,通常「英雄の生涯」と訳される。 若い頃はシュトラウスかっこえー!(中二病的)なんて聞いていたが,それ相応に年を重ねるとそういうに聴き方には違和感がある。 この原題,Einは不定冠詞だし,Heldは主人公,Lebenは生活という訳ができるから,「ある平々凡々とした男の生活」という意味にも取れ,天才シュトラウスが10年後を見越したリアルな生活のような解釈がぴったりハマる。 そう,意気揚々と出勤し(出落ちとしか言えない冒頭は最早そうとしか思えない(褒めている念のため))。 世間の攻撃(フルートぉ!)には断固立ち向かう彼が, 嫁の誘惑(お小言?)には抗いながらも屈したり(解釈次第で聞こえ方が変わるのが楽しい,何しろ赤裸々な「家庭交響曲」まで書いたお人だからね), 夜中にちょっと昔のことを思いだして懐かしんでみたり(ショットグラスなんかあると滾るが,実際には焼酎だろうな),そんな英雄もとい,人間くさいおじさんが垣間見える。 ベートーベンの「絶対的英雄」には出せない庶民感である。 カラヤンは生涯で3度この曲を録音した。59年,74年,そしてこの85年,最後の録音である。 この円熟味(=おっさん臭さ(最大級の賛辞である念のため))は85年盤にしか出せていない。 対して59年盤と74年盤は軽い軽い,とにかく軽い。若者がイキっている感じすらする。 ・ だから断言する。この85年盤カラヤンは銘盤である。 ・ だから,晴れた朝にはメインのスピーカーで, 疲れた夜には音を絞った小型のスピーカーで, 長旅にはいい機種を奢った車のスピーカーで,聞き続ける。 きっと最期に持っていく一枚だろう。 もっとも,その時,このUHQCD盤かゴールド盤かは死ぬほど迷うだろうが。 ↑いや既に死んでいるだろうが。