読むたびに新しい気付きを感じる深い内容

書籍全体を通して図表の多くが適切な引用を活用してあって、全体像や背景を含めた形でとても分かりやすく効果的に示されている。 グライコサイエンスの分野において、古い情報を丁寧に取り纏めてこれだけ分かりやすく記載してある情報は非常に貴重! また、巻末に記されている「引用参考文献」がとてもキレイに見やすく紹介されていて、オリジナルとなる出典を大変大事にされていることが見て取れる。 化学・分子生物学、分子進化、構造、レクチンの歴史、糖鎖研究の変遷などを通じて各項目を「糖・レクチン」に精通した著者の広く多角的な視点から上手く整理して述べているため、糖学の入門的な活用に限らず既にこれらの専門分野に足を踏み入れている研究者の知識の整理にも有用な内容となっている。 この分野に携わる者として、過去に報告された個別の情報を思い返した時にその都度探す苦労を考えると、この一冊を手元に置いて情報の片鱗をもとに情報を本書から辿ることが出来るメリットはとても大きい。 全編にわたって発見者や開発者の情報から話が始まっていることが多いので、自分が聞いたことのある著名な研究者が文章に出てくると特に内容を頭に入れやすかった。 糖やレクチンに対して様々な視点や分野からアプローチしているため、読者の興味や専門分野を基軸にして読みやすいところから理解すれば、糖の起源(宇宙や深海?)から生物の分子ブリコラージュへのストーリー、糖認識分子レクチンの産業展開(レクチンアレイ、フロンタルアフィニティクロマト)からiPSや疾患マーカーへの活用、など、糖関連分子の基礎理解から実用化までの基本情報がとても読みやすくまとまった書籍です。 現在入手が難しい前作「糖鎖のはなし」のエッセンスが本作の前半にも示されているので、前作を入手出来なかった方は本作を早めに入手しておくと良いと思う。 昨年マーチソン隕石から発見された糖であるリボースは、原生生物への進化のカギとなるRNAワールドの構成化合物の一つで、なぜこの糖が原始地球で生物の元として用いられたのか今まさに糖学を切り口に謎が解き明かされようとしている。 加えて今年は、先週オーストラリア政府から着陸許可を得たはやぶさ2が小惑星リュウグウから採取したサンプルを持ち帰るため、生命誕生の鍵となる新しい物質の発見が期待される。 糖から生命の起源へ!