佐渡裕がなぜゲストに招いたか

大阪の年の瀬の恒例行事 サントリー1万人の第九。2018年の第1部のステージにベンヤミン ・アップルが立った。身長195センチ。すらりとした立ち姿は大ホールでも際立った存在感だった。 マーラーの「リュッケルトの詩による歌曲集」から4曲をピアノ伴奏で歌った。15000以上の人々が彼の歌に聞き入り、彼はホールに深いしじまを描いた。 1982年ドイツ・レーゲンスブルク生まれの36歳。深くも華やかな艶のある声。若いながらも表現豊かな歌唱力。1万人の第九の総監督である指揮者の佐渡裕さんが彼をゲストに招いたのはそんな若い才能を多くの日本の人に知らしめたかったからかもしれない。 このアルバムはどこか懐かしくとても温かい。 序章から始まり、生い立ち、土地、人びと、旅の途上、憧憬、国境の向こうへ、エピローグとテーマごとにアップルの魂の遍歴を辿ることができる、そんな珠玉の25曲が収められている。 アップルはすでに大家への道を歩み始めているのだろう。欧州はもとより、アメリカそしてアジアと活動のエリアを着実に広げている。数十年後の世界から振り返れば、このアルバムはきっと記念碑的な歌曲集となっていることだろう。