小品以外では、ラヴェルの最後のまとまったピアノ作品。1914〜17年にかけて作曲され、6曲がそれぞれ第一次世界大戦で命を落としたラヴェルの友人に捧げられている(1=ジャック・シャルロー、2=ジャン・クルッピ、3=ガブリエル・ドゥリュック、4=パスカル・ゴダン、5=ジャン・ドレイフュス、6=ジョセフ・ドゥマルリアーヴ)。そのような成立事情もあって、原タイトルの[Le Tombeau]は「墓」と呼び慣わされてきたが、フランスでこの言葉は(音楽に限らず文学作品においても)「〜に捧げられた(墓碑銘)」という意味で用いられ、hommageとほぼ同義である。この作品の純然たる作曲動機も、偉大なる先人クープランを模した、擬古的な舞曲の枠組みのなかで、ラヴェルらしい先取の試みを書き留めることにあった。また、多くのピアノ作品がそうであるように、ラヴェルの頭のなかで、各声部はオーケストラのしかるべき楽器の響きを伴って鳴り響いていたのだろう。19年4月に行われたマルグリット・ロンによるピアノ版初演ののち、翌年2月には(オリジナルから4曲を選び配列を変えた)管弦楽版の初演が行われている。第一次世界大戦によってヨーロッパ全土と北米にもたらされた近代戦の悲惨な戦禍と長い疲弊を考えるとき、この明るい典雅な響きを、けっして声高にならない反戦の歌と聴くことは、あながち無理ではないかもしれない。ラヴェルの高弟ペルルミュテール所有の楽譜に書き込まれたレッスンの指示、自らのメモ、ぺダリングの工夫、フレージングの強調、込み入った音符を右左手いずれで取るか、など実用性の高い情報を青版で整理して再現。また、底本にはほとんど入っていない運指は初めから墨版で刷り込んだ。どうやったら弾けるか、がわかる学習版として希少な価値を持つ、と本国でも原本は高い評価を得ている。
校訂者による序/校訂者略歴/底本に印刷された楽語(以上、仏日対訳)
1 PRELUDE、2 FUGUE、3 FORLANE、4 RIGAUDON、5 MENUET、6 TOCCATA(青版と墨版による2色版)


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