経済学の知的冒険を続けるために

著者自身がレビューするのも変ですが、ふりかえってみると、経済学のいろんな本に「書評」することに知的関心を覚えたのは、その当時、北海道大学におられた西部忠先生(現在は専修大学教授)が「週刊ダイヤモンド」に定期的に書かれていた文章(書評)を読んでいたからだと思います。学会誌や大学紀要の書評とちがって、一般紙や経済紙の書評は字数がかなり限定されており、短い分量でその本の魅力をわかりやすく書かないといけません。「読む力」は当然ながら必要ですが、それと同時に「書く力」も求められます。「いつか自分もあんな書評が書けるようになりたいな」、そう思いました。本書は15年に及ぶ一般紙での書評を再録しながらも、たんなる書評集をこえて、経済学という学問を学ぶことの面白さや楽しさなどを伝えることができればと願って作りあげられた作品です。 本書は、あくまで私自身の知的関心に沿ってテーマ別に書評を編成してみましたが、「市場と貨幣」や「資本主義と社会主義」という一連の理論的問題群は、今なお重要な意味をなし続けていると思います。「経済」とそれを解明する「経済学」のあり方を突き詰めていくと、そこには「人間」という存在、そして人間は「貨幣」を媒介としながら「資本主義」社会のなかで生き暮らしています。人間や貨幣、そして資本主義を考えることが経済学の大きな課題であり、さらには資本主義をこえうる新たな社会経済モデルの可能性についても論議が活性化してきています。20世紀の問題とみなされていたものが、実際のところ、21世紀になっても依然として「未解決」のものとして理解され、人類はそれへの探究を続けているのです。本書の言葉を使えば、経済学という学問をめぐる知的な「冒険」は今後も続いていくのです。 本書『経済学の冒険』はけっして書評集の決定版でもなんでもありませんから、また新たな書評集の刊行が未来において登場することでしょう。新たな年を迎えつつなるなか、今はそんな感慨をもっているところです。ぜひ本書をつうじて、経済学に興味をもってもらえることを期待しています。とりわけ高校生や大学生の若い世代の皆さんに対してそう期待しています。