心理描写

鎖国が始まった直後の日本。布教のため九州にやってきた外国人司祭の葛藤を厳しく描いている。一般にキリスト教の弾圧というと踏み絵だが、本書は、司祭自身が棄教しないと、貧しい日本人の教徒が拷問される、かような極限の心理描写が凄まじい。キチジローという優柔不断な男がユダよろしく登場し、物語を深く掘り下げる。著者がキリスト教徒であり、また知性と筆力があっての傑作だが、にしても、昨今の芥川賞受賞作の、なんと浅薄なことか。