初めは『世界の終わりと~』や『ねじまき鳥』の井戸の中の世界のように、徐々に意識下のもう一つの世界に潜っていくパターンかと思って読み進めていたが、そうではなく、基本的には外側からの描写に終始している。ただ主人公マリの姉のエリの世界が、もう一つの世界と混線していることを感じさせる場面が続き、妹マリによってそれが救済される予感を残しながら物語は終わっている。手法は違えど、根幹の部分ではこれまで村上春樹がテーマにしてきた闇や暴力、意識下での葛藤などを継承していると感られた。