江戸時代の温泉番付にも載る山形庄内の湯田川温泉。ますや旅館は数年前に一度泊まった時に朝御飯が大変美味しかったので、今回も迷うことなく決めました。 宿の風呂は男湯、女湯と家族風呂の三つ。どの風呂も二人入ればちょうど良いくらいの大きさですが、お湯が実に柔らかい。無色無臭で癖がなく湯をこすると微かなぬめりが指に残ります。かけ流しの湯が贅沢にあふれ出る、実に気持ちの良い名湯です。 夕食は部屋を替えた個室に並べられていて、おそらくは庄内浜で獲れた刺身がタイミング良く運ばれてきました。地の野菜や海藻を使った小鉢、身の厚い子持ちカレイの一夜干し、タラの身が入った餡かけ真薯、おそらくは庄内産の豚しゃぶ等。季節の鱈汁は後から熱々で運ばれてきました。どの料理も地の素材を生かし丁寧に作られていて実に美味しい。食べきれない炊き込み御飯は部屋に持ち帰りました。 翌朝の朝食は大皿から好きな物を取り分けて食べる形式。きんぴらゴボウ、ひじきや切り干し大根、油揚げと青菜の煮物など、定番ながらどれも絶妙の味付けで素晴らしい。一口大の鮭やイワシの焼き魚や、黄身の濃い温泉卵もある。庄内米の御飯が美味いことは言うまでもありません。 栞によれば、ますや旅館は女将と若旦那、若女将の三人で切り盛りされているとのこと。家族で営まれているから宿の伝統と方針がしっかり守られ引き継がれているようです。室にトイレはなく共同ですが、お仕着せのサービスが一切ないところは逆に気持ち良いです。 連泊二日目に軽めの夕食をお願いしたら、好物のカキフライが出て大満足。50年に及ぶ私の温泉遍歴の中でも三指に入る名旅館でした。ただし、エビ・カニやA5ランクをお好みのご仁や、細かいことが気になる方はご遠慮願います.春は孟宗(筍)、夏は岩ガキ、秋は芋煮、冬は鱈汁と一年中の旬を愉しめますが、この宿の真価はやはり雪の積もる冬にあると思います。 余談ですが、ますや旅館の程近くに湯田川音楽館「ぱっころ」という館があります。そこには館主が趣味で集めた1960年代以降の洋楽、邦楽のベストヒット上位のシングルレコードが大量に揃えられていて、リクエストカードを渡せばすぐに掛けてくれます。入口が民家風なので少しためらいましたが、思い切って入ったらご主人夫婦が暖かく迎えてくれました。湯田川を訪れたら一度立ち寄られると良いと思います。