16歳の夏、私はこの宿の前を自転車で通り過ぎた パンと牛乳だけで夏の盛りに自転車で九州一周したのもアレだが、鹿児島市内から1日で、しかも高千穂河原に寄ってここまで来た当時の自分は、相当にアホであったように思う えびの高原でちらりと見えた厳かな当時国民宿舎の当宿に、いつかは秘書同伴で宿泊できるような、そんなリッチな大人なることを誓いつつ、夕暮れの県道1号をくねくね登って峠付近の湯治場に1泊千円で宿泊したのだった あれから36年 当時のことをふと思い出し、この度の秋の訪れと相なった 秋の高原は素敵だ 日々の澱を、夕陽に映える韓国岳と満天の星空、そして高千穂河原の旧宮に降り立つ神が全て雪いでくれる なぜもっと早くこの地を再び訪れなかったのだろう なぜその導きを頑なに拒んできたのだろう 連休ゆえ満室であったようだが、ほとんどが我々と同じ中高年夫婦であった これほどまでに静謐な宿を、私は今の時代に見たことがない また訪れたい 何度も何度も、訪れたい