道は,昔も今も最も身近なインフラである。或る道がそこに存在するのには,それなりの理由がある。莫大な財・時・労力を費やし,時には人命の犠牲も伴う。川を越えるには橋が,峠を貫くトンネルが穿たれる。やがて道は人間に恩恵をもたらし,時代とともに道自体が発展し,一方では,使われなくなり,やがて自然に戻っていく道もある。 この書は,今後自然に戻っていくであろう道,すでにそうなりつつある道,完全にそうなってしまった道に光を当てている。著者自身の足で確認した現状を踏まえ,その道が生まれるに至った理由,時に建設の様子,そして活躍していた頃の様子,やがて捨てられ,忘れ去られていく様子など,その道の生涯にまでに踏み込む深い資料考証力と考察力が及ぶ記事は,よくある探検・冒険モノの「廃」探索本とは一線を画する。 とは言え堅苦しい内容ではなく,読みやすい表現と,探索時の臨場感あるレポは,探索の追体験として楽しめる。その後,或いは折々にその道の詳細が語らている点が知的好奇心を充足してくれる。地図や写真も多用されているが,文庫本の性質上,その画質は十分ではないのが残念ではあるが,その幾つかは著者のサイトでも公開されている。
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廃道探索山さ行がねが
道は,昔も今も最も身近なインフラである。或る道がそこに存在するのには,それなりの理由がある。莫大な財・時・労力を費やし,時には人命の犠牲も伴う。川を越えるには橋が,峠を貫くトンネルが穿たれる。やがて道は人間に恩恵をもたらし,時代とともに道自体が発展し,一方では,使われなくなり,やがて自然に戻っていく道もある。 この書は,今後自然に戻っていくであろう道,すでにそうなりつつある道,完全にそうなってしまった道に光を当てている。著者自身の足で確認した現状を踏まえ,その道が生まれるに至った理由,時に建設の様子,そして活躍していた頃の様子,やがて捨てられ,忘れ去られていく様子など,その道の生涯にまでに踏み込む深い資料考証力と考察力が及ぶ記事は,よくある探検・冒険モノの「廃」探索本とは一線を画する。 とは言え堅苦しい内容ではなく,読みやすい表現と,探索時の臨場感あるレポは,探索の追体験として楽しめる。その後,或いは折々にその道の詳細が語らている点が知的好奇心を充足してくれる。地図や写真も多用されているが,文庫本の性質上,その画質は十分ではないのが残念ではあるが,その幾つかは著者のサイトでも公開されている。