ボルヘスがセルバンテスを尊敬、継承しているのは言うまでもない。当時のピカレスクロマンを読み漁り、これでもかと書かれた小説ドン・キホーテの面白さは当然並でない。短編小説集も読んでみるといい。その物語の語り口の巧さに驚くに違いない。こんなに楽しい名作を読まないのか、理解できない。天才的な技術の粋がここに表れていると言っても過言ではない。
易は、占いの本であるという認識だけで片付かない。むしろ、占いは読者を導くための良い意味での仕掛けであるとさえ思える。しかし当然われわれは、易で占う。決めかねることについて、不安な未来について、何らかの回答を得たいと思うものである。それで間違っていない。しかし、ひとつの卦の意味、変爻の意味の深さを身につけて、はじめて吉であることを考慮に入れるとき、われわれは常に衿を正さねばならない。凶などであれば、なおさらである。すなわち、この書は処世といっても、目的を外に定めるからには、まずおのが身を律せねばならない。律するというと、やや堅苦しい感がただようが、そうではない。むしろ、身を変化に適応できるだけ、柔らかくせねばならない。さらに、踏み込んで言えば、われわれは、いずれは死ななければならない。そうしたとき、凶という困難でさえ、われわれの生の宝である。われわれ人間は、その困難からこそ、よく学ぶものなのだ。それは繋辞を読めば分かるものなのだ。そうであるなら、この書に記されているすべての文言は、常にわれわれ人間のあり方のひとつに相当しないだろうか。
期間限定の特別価格でプレミアムサービスを体験
あなたのビジネスを次のレベルへ
© Copyright 2025, All Rights Reserved
ドン・キホーテ☆(全6冊)☆
ボルヘスがセルバンテスを尊敬、継承しているのは言うまでもない。当時のピカレスクロマンを読み漁り、これでもかと書かれた小説ドン・キホーテの面白さは当然並でない。短編小説集も読んでみるといい。その物語の語り口の巧さに驚くに違いない。こんなに楽しい名作を読まないのか、理解できない。天才的な技術の粋がここに表れていると言っても過言ではない。
易
易は、占いの本であるという認識だけで片付かない。むしろ、占いは読者を導くための良い意味での仕掛けであるとさえ思える。しかし当然われわれは、易で占う。決めかねることについて、不安な未来について、何らかの回答を得たいと思うものである。それで間違っていない。しかし、ひとつの卦の意味、変爻の意味の深さを身につけて、はじめて吉であることを考慮に入れるとき、われわれは常に衿を正さねばならない。凶などであれば、なおさらである。すなわち、この書は処世といっても、目的を外に定めるからには、まずおのが身を律せねばならない。律するというと、やや堅苦しい感がただようが、そうではない。むしろ、身を変化に適応できるだけ、柔らかくせねばならない。さらに、踏み込んで言えば、われわれは、いずれは死ななければならない。そうしたとき、凶という困難でさえ、われわれの生の宝である。われわれ人間は、その困難からこそ、よく学ぶものなのだ。それは繋辞を読めば分かるものなのだ。そうであるなら、この書に記されているすべての文言は、常にわれわれ人間のあり方のひとつに相当しないだろうか。