序章:二見浦への誘い
伊勢志摩の名勝地として知られる二見浦。夫婦岩で有名なこの地に佇む「海洋楼」は、まさに海の恵みを存分に味わえる隠れた名宿である。今回、初夏の風が心地よい季節に、この海鮮割烹の宿での一夜を過ごす機会に恵まれた。
到着:海辺の風情に包まれて
JR二見浦駅から徒歩約15分、潮の香りを感じながら歩を進めると、海洋楼の趣ある建物が見えてくる。伝統的な日本建築の美しさを保ちながらも、どこか現代的な洗練さも感じさせる外観。玄関に足を踏み入れると、女将の温かな笑顔と共に「お疲れさまでした」の声が迎えてくれた。
ロビーからは二見浦の美しい海岸線が一望でき、遠くには夫婦岩の神々しい姿も望むことができる。チェックイン手続きを済ませながら、早くも期待が高まってくる。
客室:海への扉
案内された客室は、8畳の和室に広縁が付いた海側の部屋。畳の香りと海風が心地よく混じり合い、都市部の喧騒を忘れさせてくれる。窓を開けると、眼前に広がるのは青い伊勢湾。波の音が自然のBGMとなって、心を穏やかにしてくれる。
部屋の設えは質素ながらも清潔で、必要なアメニティは一通り揃っている。何よりも、この絶景を独占できることが最大の贅沢だろう。
夕食:海の恵みの饗宴
海洋楼の真骨頂は、やはり夕食の海鮮割烹にある。個室の食事処に案内され、目の前に並べられた料理の数々に思わず息を呑む。
お造り
まずは本日の新鮮な刺身の盛り合わせ。伊勢湾で獲れた地魚を中心に、鯛、ひらめ、あじ、そして季節の貝類が美しく盛り付けられている。醤油に少し山葵を溶いて口に運ぶと、魚本来の甘味と旨味が口いっぱいに広がる。
煮物
続いて登場したのは、地元産の伊勢海老を使った煮物。プリプリとした食感と濃厚な味わいは、まさに海の女王の風格。出汁の効いた煮汁も最後の一滴まで味わい尽くしたい逸品だった。
焼き物
炭火で丁寧に焼き上げられた鮎の塩焼きは、皮はパリッと身はふっくら。内臓のほろ苦さが初夏の風情を演出している。
揚げ物
天然の車海老と季節野菜の天ぷらは、軽やかな衣に包まれた海の恵み。特に車海老の甘さは格別で、頭から尻尾まで余すところなくいただいた。
蒸し物
茶碗蒸しには、小さな蛤がひっそりと隠れており、蒸し上がったばかりの優しい食感と磯の香りが印象的だった。
ご飯もの
最後は、地元産のコシヒカリに海苔とじゃこを散らしたシンプルながらも滋味深いご飯。味噌汁は蜆の出汁が効いており、お腹を優しく満たしてくれる。
料理長の技術と季節への配慮が随所に感じられる、まさに海鮮割烹の真髄を味わえる夕食であった。
夜の二見浦:神秘的な時間
食後は宿から徒歩圏内の夫婦岩へ夜の散歩に出かけた。月明かりに照らされた夫婦岩は、昼間とはまた違った神秘的な美しさを湛えている。波音と虫の声だけが響く静寂の中で、自然の偉大さと神々しさを改めて感じることができた。
朝:海からの贈り物
翌朝は早起きして、客室から日の出を拝むことができた。水平線から昇る太陽が海面を金色に染める様子は、何度見ても感動的だ。夫婦岩の間から差し込む朝日は、まさに神々しく、二見浦が古来より神聖な場所とされてきた理由を実感する。
朝食:優しい和の味わい
朝食は、夕食とは対照的に優しく上品な和定食。焼き魚、出汁巻き卵、小鉢料理の数々、そして炊きたてのご飯と味噌汁。シンプルながらも一品一品に心がこもっており、朝の身体に染み渡るような美味しさだった。
特に印象的だったのは、地元産の海苔を使った佃煮。磯の香りが口の中に広がり、ご飯が進む絶品だった。
別れの時:心に残る思い出
チェックアウトの時間が近づき、名残惜しくも海洋楼を後にする時が来た。女将をはじめとするスタッフの皆さんの心温まるおもてなしと、新鮮な海の幸を堪能できた贅沢な時間。
二見浦の美しい景色と共に、この宿での思い出は心の奥深くに刻まれることだろう。
総評:海と共に生きる宿の魅力
海洋楼は、決して豪華絢爛な宿ではない。しかし、二見浦という恵まれた立地を最大限に活かし、新鮮な海の幸と心のこもったおもてなしで、訪れる人々に特別な時間を提供してくれる。
海を愛し、海の恵みに感謝する心。そんな宿の姿勢が、料理一品一品、スタッフの対応一つ一つに表れている。次回は違う季節に訪れて、また新たな海の表情と味覚を楽しみたいと思わせてくれる、そんな宿である。
宿泊情報
- 宿名:海鮮割烹の宿 海洋楼
- 所在地:三重県伊勢市二見町
- アクセス:JR二見浦駅より徒歩約15分
- おすすめポイント:新鮮な海鮮料理、二見浦の絶景、心温まるおもてなし

