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彼女を大胆な行動に駆り立てた理由とは? 周囲の沈黙と冷笑の中、すべてを失いながら自らの良心に従いながら一人で行動し、自由を勝ち取った女性の手記。 ロシアのウクライナ侵攻後まもない2022年3月14日。モスクワの政府系テレビ局・チャンネル1のニュース番組中にスタジオに乱入し、反戦ポスターを掲げた女性。この映像は瞬く間に全世界に配信され、一躍時の人となったマリーナ・オフシャンニコワ。 しかし彼女の行動は、欧米での賞賛の一方、母親はじめ国内の多数派からは「裏切者」のレッテルを張られ、激しいバッシングの対象に。 同局のニュース編集者として何不自由ない暮らしをしていた彼女をこの行動に駆り立てた理由とは? そして、彼女の周辺のメディア関係者は、ごく少数の支援者の強まる言論統制のなかでどのような行動をとっていたのか? 反戦行動後、逮捕・失職・親権制限・自宅軟禁など、次々とやってくる逆境。 最終的には娘を連れて決死の国外脱出に成功するまでの激動の7ヵ月間を描く。
レビュー(7件)
大きな波紋が起こった出来事の渦中で、事態の推移を御自身の来し方を交えて綴った内容である。何かドキュメンタリー風な演出の映画の作中世界に入り込むような感じで、少し夢中になって読んだ。 「報道の自由」というような事柄、気になることを自由に論じて意見表明をするというような事柄が年を追って歪められているというようにマリーナ・オフシャンニコワは感じて息苦しかった。そんな中の「戦争」だった。そこから例の「騒ぎ」だ。 ロシア人、ウクライナ人とが互いに武器を突き付け合う哀しみを慮ることが出来る故に、安寧を奪われる無念さを知るが故に、彼女は「NO WAR!」(戦争反対!)と一声上げたかったのだという想いが本書から伝わる。が、そうやって一声上げた彼女は「情報戦」の渦のど真ん中に晒されてしまうことになる。 恐らく彼女は、亡命先―それに至る経過等も、可能な範囲で本書に詳しく綴られている。―で、ロシアやウクライナの件も含めた言論活動を展開するようになるであろう。何か発表されるのなら、それらも是非拝見したい。 凄く読み応えがある本書である。これも未だ続く戦禍に関する色々なことを考える大変に重要な材料たり得る一冊だと思う。広く御薦めしたい。