- 57
- 4.44
文芸評論家・斎藤美奈子氏激賞! 第19回開高健ノンフィクション賞受賞作 1945年夏ーー。日本の敗戦は満州開拓団にとって、地獄の日々の始まりだった。 崩壊した「満州国」に取り残された黒川開拓団(岐阜県送出)は、日本への引揚船が出るまで入植地の陶頼昭に留まることを決断し、集団難民生活に入った。 しかし、暴徒化した現地民による襲撃は日ごとに激しさを増していく。 団幹部らは駅に進駐していたソ連軍司令部に助けを求めたが、今度は下っ端のソ連兵が入れ替わるようにやってきては、“女漁り"や略奪を繰り返すようになる。 頭を悩ました団長たちが取った手段とは・・・・・・。 《選考委員、全会一致の大絶賛!》 作品は、共同体の「自己防衛」のために女性たちを「人柱」に捧げる「隠された暴力」の柔らかなシステムを浮かび上がらせている点で、極めて現代的な意義を有していると言える。 ーー姜尚中氏(東京大学名誉教授) 本書は、変わることのできなかった日本人の問題として悲しいことに全く色褪せていないのである。 ーー田中優子氏(法政大学名誉教授) 犠牲者の女性たちが著者の想いと心の聴力に気づいて、真実の言葉を発してくれたのだ。 われわれはその言葉に真摯に耳を澄まし、社会を変えていかねばならない。 ーー藤沢周氏(芥川賞作家) この凄惨な史実をほぼすべて実名で記した平井の覚悟と勇気は本物だ。 隠された史実の掘り起こしだけではない。ジェンダー後進国であるこの国への果敢な挑発であり問題提起でもある。 ーー森達也氏(映画監督・作家) 【著者略歴】 平井美帆(ひらい・みほ) 1971年大阪府吹田市生まれ。ノンフィクション作家。 1989年に高校卒業と同時に渡米し、南カリフォルニア大学に入学。同大学で舞台芸術と国際関係学を学び、1993年卒業。 その後、一時東京で演劇活動に携わるも、1997年に再び渡米し、執筆活動を始める。2002年に東京に拠点を移す。 著書に『中国残留孤児 70年の孤独』(集英社インターナショナル、2015)、 『獄に消えた狂気 滋賀・長浜「2園児」刺殺事件』(新潮社、2011)、『イレーナ・センドラー ホロコーストの子ども達の母』(汐文社、2008)、 『あなたの子宮を貸してください』(講談社、2006)など。
レビュー(57件)
悲惨ですね。
日本人の悪い所がさらけ出されていますね。
ショック
発送方法に問題点はないが本体カバーが水に濡れた後のようにフニャフニャの跡があった。今まではこんな事はなっかったのでショックでした。本を読む前から気分がへこみました。
時代
1945年。敗戦後の満州。ソ連兵が侵攻し、日本人女性を強姦。これは過去にも書かれた話だが、本書は、岐阜県の黒川村から渡満した一団にスポット。日本人のリーダーたちが団を守るため敢えて、独身の女性たちを差し出した「史実」を綴っている。いわく「接待」。ソ連兵だけでなく満人にも。身勝手な男たちへの怒りでもあるが、実名で書くことへの抵抗はなかったのか気にはなる。また、あの時代の日本人女性の処女性、つまり貞操観念を理解しきれていない点がマイナス材料。現代の価値観とは全く違う。もっと、はるかに深刻なのだ。
今、日本人が読むべき1冊
現代とは価値観が違う背景の中、黒川開拓団という団体で渡った満州での生活は私の想像を絶する悲惨なものだった。開拓女塾では貞操観念や大和魂を叩き込まれた17歳以上の未婚女性なのに敗戦するやいなや有無も言えず、皆の命を守るために接待の実情も知らぬまま幹部の命令の元ロシア兵に差し出されたという事実。そんなつもりで娘を育てたわけではないという力の弱い父親を残して劣悪な環境の中、性病や伝染病で命を落としていく娘もいたという。生き残った女性たちが温かく迎えられるわけでもなく、差別を受けながらもひっそりと懸命に生きてきたことを90代に入った玲子さんが実名報道を希望したことに戦争を風化せず、二度と戦争を起こしてはいけないという強い意志を感じた。 今ウクライナに戦争を仕掛けて多数の市民が命を落としている中、ロシアという国を知りたくて読んだけれども一言では感想を言えない気持ちになった。読み終えたばかりの今は一刻も早く攻撃を止めろプーチン!ということしか思いつかない。
筆者の丁寧で時間をかけたであろう取材が伺えます。 読み進めるのが辛くなるような悲劇の連続。特に同郷の人間の、被害者の女性への2次被害が情けなくなります。強姦を強要した団幹部からの中傷など、男性のずるさ、恥知らずな面がいくつも書かれています。 後半部分には、現代にも残る女性への差別を見事に可視化させた記述に脱帽させられます。 1人でも多くの男性に読んでもらいたい作品です。 開戦を決定した人間は戦後も生き延び、犠牲になるのは一般市民で、弱い立場の女性、子供である。 勇ましいスローガンや歯切れの良い言葉に躍らせる事なく、同じ歴史を繰り返さないように過去を知ることのできる良書である。