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野村克也が綴る亡き妻・沙知代さんへの愛惜。 まさかお前が先に逝くとは・・・。 生きている間に言えなかった「ありがとう」をいま、伝えたい。 (以下、本文より抜粋) 背中をさすりながら声をかけた。 「大丈夫か」「大丈夫よ」 それが最後の言葉になった。 それから息を引き取るまで、ほんの五分程度のことである。 人間の命とは、なんとあっけないものなのだろう。 あの沙知代がまさか死んでしまうとは。あらゆるものに抗って生きてきた女が、最後の最後、もっとも抵抗すべき死をこんなにもあっさりと受け入れてしまうとは。 これまで沙知代が死ぬことなど想像したこともなかった。病気もほとんどしたことがないし、持病もなかった。死ぬ直前まで、あんなにぴんぴんしていたというのに。 私は口癖のように「俺より先に逝くなよ」と妻に言っていた。返ってくる言葉はいつも同じだった。「そんなのわかんないわよ」と。 極度な心配性の私は、そんなことがあるはずはないと思いながらも、万が一のことを思って妻にそう釘を刺していたのだ。ところが、その「万が一」が起きた。あまりに突然の出来事に、心ががらんどうになった。その状態は今も変わらない。 沙知代を失って、家にも「体温」があることを初めて知った。猫はいつも家の中でいちばん暖かいところに寝ている。今の私がそうだ。この家の中でいちばん暖かそうな場所。それが沙知代の座っていた椅子だ。 家の中の目の届くところはサッチーだらけなのに、おまえだけがいない。 このがらんどうの人生を、俺はいつまで生きるんだろう。
レビュー(8件)
非常に良い商品です。
迅速に商品が届きました。梱包もしっかりとされて好感が持てます。
そこらの小説よりずっと読みがいがある
読んで本当に良かったと思える本だった。 率直に面白いと思った。単に奥さんんを亡くして寂しがってるとかそういう類いの内容ではなく、もっと深いです。野村監督の観察力、人間的深さがこの本でも感じられました。
夫婦
プロ野球で一時代を築いた野村克也氏の夫人・沙知代さんが急逝したのは2017年12月。妻に先立たれた心境を、過去も含めて野村氏が赤裸々に語っている。その昔、「夫婦万歳」あるいは「おもろい夫婦」という人気テレビ番組があったが、野村夫妻は世間の枠に収まらない存在だったと言えよう。尤も、同じ喪失感といえば城山三郎氏に名著があり、いや、プロの作家と比べては酷と言うものか。