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ヘリコプターマネーとは、ヘリコプターから市中に現金をばらまくかの如く、国民に直接カネを渡すことで、マネーサプライを大幅に増やす景気対策。バーナンキ前FRB議長は、ヘリコプターマネーの強い賛成論者として知られている。 ゼロ金利下の日本では、資金需要が増大しないために貸し出しが増大しない。それゆえに信用創造がなされず、マネーストックの増大はほとんどなかった。この現象を流動性の罠と区別するために、「信用創造の罠」と呼べば、そもそも市中のマネーが増えていないのだから、これは教科書的な流動性の罠とは異なった現象である。 それでは信用創造の罠に陥った時に、通常の金融政策はマネーストックを増大させられるだろうか。ヘリコプターマネーは直接国民にマネーを配布する金融政策の最後の手段として注目が集まっている。 ヘリコプターマネーの考え方は戦前からあり、フリードマン、バーナンキと進化してきた理論だ。だが、日本の現状と合わせた解説は未だに成されていない。本書は、気鋭のマクロ経済学者による端的な解説書。単に金融政策の解説にとどまらず、AIとの競争(労働面)という側面から日本経済を分析してきた経験を元に、ベーシックインカム(最低限の生活費給付)とセットでのヘリコプターマネー導入という具体的な導入方法も提示する。筆者の近著『人工知能と経済の未来』(文春新書)は好調。 第1章 お金のばらまきで景気は良くなるか? 第2章 政府紙幣と財政ファイナンス 第3章 長期デフレにヘリコプターマネーは有効か? 第4章 日本経済が陥った罠とは何か? 第5章 ヘリコプターマネーとベーシックインカム
レビュー(10件)
BI、財政ファイナンスについて良い説明。
ベーシックインカムを入門レベルで勉強するには参考になる。 井上智洋さんは、「AI時代の新・ベーシックインカム論 (光文社新書)」も著わしている。 本書は、政府紙幣、財政ファイナンス、信用創造の説明は、理解を促してくれた。 結局、金融緩和政策と財政支出のポリシーミックスで不況からの脱出を行えば良いと改めて思えた。 財政赤字を増税で返済する必要のないことも教えてくれる点は、日本のマクロ経済政策に貢献している。 信用創造廃止論は、どのように具体的には実行するのか示されていないため、説得力に欠ける。 金融政策をコントロールできれば、不況脱出の有効手段の1つであるにも関わらず、信用創造ごと廃止を唱えている。 ベーシックインカムを実現するために信用創造を廃止しても、企業への融資そのものが無くなってしまう。 金融機関の融資の役割について念頭になかったものと思われるので、金融機関の融資についての本を別途お求めになることを推奨します。