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農作物を家畜などから守ることを目的に約160年前に発明された鉄条網は、いつしか人と人とを隔てる強力な暴力兵器へと変貌を遂げた。先住民が押し込められた居留地、アウシュヴィッツ強制収容所、アメリカーメキシコの国境ーー著者は世界中から資料を掘り起こし、現地取材を重ね、人間の外敵排除の心理がこのシンプルな道具とともに顕在化し、爆発的に膨張したことを明らかにする。鉄条網を通して見る、もう一つの近現代史。 (主なもの) 第一章 西部開拓の主役 カンザス州の「鉄条網博物館」/切実な柵の不足/万能フェンスの登場/入植者が必要とした柵/ウシの大軍がやってきた/牧場主と入植者の戦い/職を失うカウボーイ 第二章 土壌破壊と黄塵 加速する西部開拓/鉄条網が変えた生態系/開拓進む大平原/土壌破壊の米国史/大型農業機械の導入/大砂塵の襲来/放牧規制がはじまる 第三章 塹壕戦の主役 戦場に出現した鉄条網/日本軍が手を焼いた鉄条網/塹壕戦のはじまり/西部戦線異常なし/戦場のクリスマス/日本への導入/鉄条網と現代戦 第四章 「人種の罪」と憎悪のフェンス 強制収容所の歴史/南アフリカの植民地化/ダイヤ・ラッシュ/各収容所の劣悪な環境/スペイン内戦の悲劇/アウシュヴィッツの殺人工場/元収容者が苦しむ後遺症/人間の資源化/旧ソ連の強制収容所/逆境でも花を愛でた日系 第五章 民族対立が生んだ強制収容所 南アのアパルトヘイト政策/活動家の迫害/集団墓地になった五輪会場/「民族浄化」と集団強姦/サラエボの花/世界を「欺いた」映像/戦争と情報戦/最後の逃亡戦犯を拘束 第六章 国境を分断する鉄条網 ベルリンの分断/ヨルダン川西岸の壁/壁を超えた臓器提供/米メキシコ国境/世界最大の麻薬密輸ルート/中国・北朝鮮の壁/新たな万里の長城/タイ・マレーシア国境 第七章 追いつめられる先住民 大平原を分断した鉄条網/チェロキー族の悲劇/ラストサムライ/遅きに失した先住民保護/グアラニー族の悲劇/死に急ぐ若者たち/ケニア独立運動時の裁判開始/ウサギ防除フェンス 第八章 よみがえった自然 鉄条網は自然を呼び戻す/朝鮮半島の軍事境界線/チェルノブイリ原発三〇キロ圏/再導入された希少動物/科学者の反目
レビュー(7件)
読書日記
2024年10月27日読了 ドキュメント。まあ面白かった。 鉄条網をキーにして時系列(歴史的)に書かれたもの。歴史にどういう影響を与えたのかとか。「鉄条網」とは「有刺鉄線」のこと。(「有刺鉄線」を網状に加工したものが「鉄条網」、本来は) この人は、「鉄条網」のほうがなんとなくセンセーショナルだから使っているんだろう。報道の人とかでも「鉄条網」を使う人は多い。 俺は歴史に疎いので、歴史の勉強にもなった。他にも色々勉強になった。勉強になった事を羅列。 ・アメリカには『鉄条網博物館』というのがある。 ・アメリカには、趣味で鉄条網を収集するコレクターが多い。 ・『米国政府土壌局』というのがある(あった?)。 著者が2人いて、どっちも同じ苗字なんだけど、その関係性が分からずイライラした。同じ珍しい苗字だから夫婦か親子なんだろうけど、全く赤の他人かもしれないし、みたいな。最後の最後に「あとがき」により親子と判明。 フランクリン・ルーズベルトのことをフランクリン・ローズベルトと書いていた。