家康以前の松平氏から、江戸幕府開府までをたどった本。国境の小さな国衆の存在だったものが、桶狭間で今川義元が討たれ、信長との同盟国となる。そして秀吉政権での地位向上、関ヶ原後には豊臣体制の解体、征夷大将軍に任官し江戸幕府へとつながる。近年の研究から新たな発見があり、今までの解釈とは違う歴史が見えてきます。秀吉政権の末期がいかに脆く、閉塞感のあったもであったのかということも思い知らされます。,▲なかなかうかがい知れない家康以前の松平家の様子も可能な限り述べている。 そういう点に加えてできるだけ原資料に忠実であろうという点が、家康の実像に迫るうえで効果的に働いている。 家康通史を読みたいという方におすすめ。 ▲この本を読むと、時代の流れに翻弄されながらも自国領土の保全のために最善の手を模索し続けた、ほかの戦国武将と全く同列の家康が浮かび上がってくる。 家康が特殊なのはそうしているうちに何のめぐり合わせか天下人になってしまったことで、もしかしたら当の家康がいちばんびっくりしているのかもしれない。 ▲歴史の流れや周囲の状況とかかわる家康は見えてくるが、家康の感情や機微はこの本からは窺いづらい。 まあこれは当然といえば当然で、資料に忠実であろうとすればそういう記述は排除するしかないのである。 本領安堵状に感傷を書き綴る馬鹿はいない。 こういう心のひだに触れたければ、自ら学習して原資料にあたるしかないだろう。 ▲本書においても資料の取捨選択による味付けは避けられない。 これは考古学・歴史学がいまだ解決できていない、いわば「解けない微分方程式」と同じ範疇の課題だと思う。 この課題が今後どう展開していくのか楽しみである。
レビュー(8件)
家康以前の松平氏から、江戸幕府開府までをたどった本。国境の小さな国衆の存在だったものが、桶狭間で今川義元が討たれ、信長との同盟国となる。そして秀吉政権での地位向上、関ヶ原後には豊臣体制の解体、征夷大将軍に任官し江戸幕府へとつながる。近年の研究から新たな発見があり、今までの解釈とは違う歴史が見えてきます。秀吉政権の末期がいかに脆く、閉塞感のあったもであったのかということも思い知らされます。
▲なかなかうかがい知れない家康以前の松平家の様子も可能な限り述べている。 そういう点に加えてできるだけ原資料に忠実であろうという点が、家康の実像に迫るうえで効果的に働いている。 家康通史を読みたいという方におすすめ。 ▲この本を読むと、時代の流れに翻弄されながらも自国領土の保全のために最善の手を模索し続けた、ほかの戦国武将と全く同列の家康が浮かび上がってくる。 家康が特殊なのはそうしているうちに何のめぐり合わせか天下人になってしまったことで、もしかしたら当の家康がいちばんびっくりしているのかもしれない。 ▲歴史の流れや周囲の状況とかかわる家康は見えてくるが、家康の感情や機微はこの本からは窺いづらい。 まあこれは当然といえば当然で、資料に忠実であろうとすればそういう記述は排除するしかないのである。 本領安堵状に感傷を書き綴る馬鹿はいない。 こういう心のひだに触れたければ、自ら学習して原資料にあたるしかないだろう。 ▲本書においても資料の取捨選択による味付けは避けられない。 これは考古学・歴史学がいまだ解決できていない、いわば「解けない微分方程式」と同じ範疇の課題だと思う。 この課題が今後どう展開していくのか楽しみである。