肩が凝らずに読めるけど。

故・河合隼雄氏の一般市民向けに書かれた連載記事をまとめたのが本書。文化庁長官を務めたユング派精神分析の我が国の第一人者が著者だから、さぞ難解な展開が待ち受けているのでは・・・と思いきや、そういう泰斗だからこそ、普通の読者を想定して平易な言葉で、日常の心の持ちようやら、人づきあいにおける肩の力の抜きようやらを、説いてくれる。最も頷けたのは、第22章の「自立は依存によって裏付けられている」の一節。早い時期からの自立が必要と親が早合点して育てられた子供に、言葉の発達の遅れがみられたという例から、親への依存を十分に味わった後、子供は勝手に自立してゆくものだ・・・との指摘は、私の周囲に見られる数例を説明してくれるに余りあるものだった。一方で、誰かがどこかで既に述べたような記述も多く、河合氏の著述にしては冴えや切れがいま一つといったところ。