九州の水郷都市・箭納倉(やなくら)で、老女ばかり三件の失踪事件が相次いだ。消えた女性はみな掘り割りに面した家に住んでおり、しばらくするとみなひょっこりと帰ってきた。失踪中の記憶を失ったまま……。事件に興味を持った元大学教授の協一郎ら4人は<人間もどき>と<それ>の存在に気付く。下敷きになっているのはジャック・フィニの「盗まれた街」(映画「ボディ・スナッチャー」の原作)で、作品中にも登場する。しかぁし、これがまたうまいこと使われているんだよなぁ。早々にこのネタを登場させて読者に「SF怪奇もの」という先入観を与えておきながら、ラストは全然違うところに着地する。<それ>による「人類補完計画」だったとは……。ん~~うまい。素直におもしろかった。読み始めたら止められないんだもんなぁ。結局<それ>の正体は明かされないし、町中の人が消えた時にすでに相当数いたはずの<人間もどき>の存在は?とか思っちゃうところもあるけれども、水郷都市の郷愁描写が心理描写と相まって緊張感を高める効果は秀逸。ついでながら告白すると、恩田陸ってこの本のあとがきを読むまでずっと男性だと思っていた……。