今の時代、まさに必要な小説

貫井徳郎さんの本はいろいろ読んできましたが、最新の文庫版ということで期待して購入しました。 多くの小市民たちのモラルのない行動の積み重ねが、やがて大事故に繋がっていくというストーリー展開に、心魅かれるものがあります。 非現実的なキャラクターが登場する楽しい謎解き小説もたまには悪くはないですが、東野圭吾作品にも見られるように、小説の魅力の一つに、緻密な人物描写と、現代社会の矛盾を問うような力強さがないと作品としての迫力に欠けると思うので、そういう意味でこの作品はまさに今の時代に必要とされる小説であると言えるでしょう。 ただ残念だったのは、主要な登場人物の思考回路や行動に、共感は得られたものの、切迫感という点ではやや物足りなさを感じ、終盤で一気に読み進められなかった面があったので★1つ減らしました。 ですが、それを差し引いても、自分自身の普段の生活の心がけに対する意識まで変化をもたらしてしまいそうな、中味の濃い大人向けの作品です。