夢十夜こそ幻想の極致
漱石は現代文学に慣れてしまった現代の学童には決してお奨めできない文章表現なのは否めないし、強いてチョイスするなら無難に「猫である」「坊っちゃん」だろう。しかし小説ジャンルで言えばあまりにも短いこの「夢十夜」ほど最早形骸化した<純文学>に置いて、漱石がなぜ傑出した文豪なのか?思い知らされる作品はないと思う。簡単に言えば「恐い」。うなされるような、漱石自身が見たはずの夢を、綺麗に結晶させて読み手の力量に合わせるかのように、流麗な短編仕上げにしたこの数ページは、他に類をみない傑作であり永遠の名作と呼んでいいものだと思う。寝る前には読まないほうがいいのは間違いない。文庫化にあたっての編成は「文鳥」などかなりシビアな作風を集めていて、新潮文庫のこれがお奨めだと思う。
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