草枕

長野県松本市の本庄病院で地域医療の最前線にあった内科医・栗原一止が、信濃大学附属病院に移って2年。大学病院という摩訶不思議な世界で、しかし本来の医師らしさを貫いていく物語。膵癌で余命僅かな29歳の母親、住み続けている「御岳荘」の取り壊し騒動などが盛り込まれる。医療の有り方、とりわけ大学病院の矛盾は、現役の医師ならではの視点。著者は漱石のファンであることから、このペンネームにしたわけだが、今回は「草枕」を頭に置いて読むべきだろう。過去の作品に比べ出色でもある。