北海道の中でもとりわけ開拓の遅れた道東中標津あたりから釧路。この作者の文章は、いつも景色がまざまざと瞼に浮かんでくるような映像的な作品だ。 「極貧」と今なら思うが、あの当時はどこもドングリの背比べでみな等しく貧しかったのだと思う。 まるで一代記ドラマを見るように、読んでいるのに映像として頭の中に入ってくる。 女3代5人。主人公は百合江だが、一番書かれていない母に心が残る。 書いていないのに心を残させるのはさすが、この作者の力量だと思う。 残念なのは終盤、作者自身が息切れしたのか書き焦ったのか、老人ホームにいる高齢男性の告白を、ただセリフだけで流してしまったあたりが悔やまれる。従姉妹が温泉で語るあたりも書き急いでいる。まるで別の作家の筆のようになってしまった。 できるものなら、賛否両論のラストと共に、終盤を大幅に加筆修正していっそうの大河ドラマ風にしたものを読んでみたい。終盤の書き急ぎのためにこの大作が減点されるのはもったいないと思う。 また桜木氏の小説は6,7冊読んでどれも面白かったが、題名が今ひとつ垢抜けないというか、ただの識別記号のように淡白なのが惜しまれる。まあそれも一つの手段ではあるのだが・・・