「手頃な分量」と思われる文庫本に11篇の短篇小説が収められている… 11篇は何れも、例えば雑誌掲載であれば「“連載”にはならないような頁数」という感じな作品である。各作品は、各々に短篇等が収められた本に掲載された経過を有しているが、殆どの作品は昭和20年代後半頃のモノであるという。実際、「昭和20年代の様子…」という描写になっている作品が多かった。そして「本筋ではない…」ということになってしまうのかもしれないが、そういうような時代の風俗が窺えるような各作品の描写に、何となく興味も覚えた。 各篇は何処となく「奇妙な物語…」というような色彩を帯びているような気がした。何か「幻めいた作中世界」に引き込まれるかのような、不思議な空気感が漂う。 が、本の標題になっている、本の最初に収録されている『女神』は「如何にも三島由紀夫の小説…」というような雰囲気であるような気がした。 『女神』に登場する男は、「美しさ」というような事柄に関しての「自身の価値基準や規範」というようなモノに妄執しているように見受けられ、妻や娘にその自身の妄執に従うように強いているような面が在る。そして妻がその妄執から離れて行って、娘の身の上にも少しばかりの変化が起こる中で、如何なって行くのかという物語だ。何処となく、『美しい星』に出て来る人物達の造形を思い出した。 『恋重荷』には、「東京駅に夜行列車が到着、乗って来た友人を迎える」というような場面が出て来て、そこが妙に気に入った。 手軽に読める短篇を淡々と読み進めて過ごすようなこと…時にはなかなかに好いかもしれない。