ぼんやりアウトラインだけを知っていた、三億円事件という迷宮入り事件の代名詞のような犯罪を明瞭に見せていきつつ、大勢の登場人物がそれぞれ違うベクトルに異常なまでの執念を見せ蠢きはじめる前半は、面白い群像劇を見ているようなスピード感があり楽しめた。が、後半に入るとその執念の底深さが不可解の域に達してしまい、鼻白んでしまった。読みやすい文体、分かり易い状況描写がされているだけに、それがより一層はっきり認識されてしまい、勿体なく感じた。