うつの本としては、この本を含めて、この著者の右に出る者はないと思います。非常に説得的な論理的な理解を促してくれます。自分がうつの場合にも、家族や知人がそうである場合にも、なぜそうなるのかがよく分かります。この病気が、どれほど人間の在り方に食い込んだ、いつだれにでも発症しうるものであることがよく分かります。発症機序が脳生理学や薬物生理学において、未だ研究途上の仮説的な段階の現在、また、治療法が薬物から宗教的なものまで多様であるという意味で十分にエビデンスのあるそれが確立されておらず、そのゆえに謎と症状の多様性の多い、ひとに理解してもらいにくいこの病気に、すくなくとも人間の在り方に根ざした、納得できる輪郭を与えてくれる著者です。たんなる研究のための研究者・学者ではなく、現場中の現場の実践のなかから、(何度も言いますが)人間の在り方に根ざして発見され生み出された説明原理を明示してくれることが、説得的と言う意味です。学会や学閥や流派から自由な、つまり、それらに縛られた精神科医でも心理療法家でもないことが、この著者の力量を高めていると思います。<うつなんて関係ないよ>といえるような管理職には是非読んで欲しい本です。そのようなひとたちは、うつ病に本当に死ぬほど苦しみ、あるいはカミングアウトできないおおくのひとびとに対して、発症と重症化の悲劇的な推進者たちなのですから。(残念ながら、そんなひとはこの本を読まないでしょうけど)。そのようなひとたちには、是非是非、早急にうつを発症して自殺に追い込まれるほど苦しんでいただきたいと願います。安穏とした豊かで名誉ある老後なんて、かれらには許さない。メンタルヘルスが叫ばれ始めた今、これは過激、非常識なものの言い方かもしれませんが、過労から発症し、管理職の知らぬふりや無知蒙昧な対応で重症化した、いろんな意味で人生の崩壊過程にあるうつ病患者の一人としての正直な気持ちです。