瑞々しい秀作

「ナンシー・ドリュー」シリーズをご存知でしょうか。今からはるか昔、ハーディ・ボーイズシリーズとともに少年ミステリーシリーズとしてドラマが放映されていました。明晰で活発な少女が探偵になって華麗に謎を解き明かすというシリーズです。 本作は、この「ナンシー・ドリュー」シリーズのプロットや人物造詣を濃やかに書き込んだ「大人版」ともいえる雰囲気を持っています。物語としては極めて王道です。ミステリー作では常套ともいえる記述というか、強調的な書きぶりによって、初めのほんの数章で犯人と謎解きのキーが読み慣れた読者ならぴんときます。 それでも最終章までぐいぐいと吸い寄せられるように没頭したのは、やはり主役ピップと、かつ「彼女の自由研究」という体をとっているせいでしょう。読者もピップの視点に立って、ピップになりきりながら、ピップと一緒に考えながら、物語の中に吸い込まれていきます。しかも、ピップがとにかく頭が切れる。なりきった読者も名探偵になった気分です。しかも、彼女は公平で正義を愛し、偏見で視界を曇らせることがありません。 解決へ向けて彼女がどのように突き抜けていくか、彼女とともに物語の中を疾走していくことになります。 事件や関係者の今後等は悲惨ですが、それでも一貫して爽快感があるのは、この彼女の人となりにおうところが大きいです。彼女の眼を通してみた物語の中の世界は、けっして人の心を裏切らない、と信じることができるのです。 アレン・エスケンスの「償いの雪が降る」とある種、同じ流れをくむ作品と感じました。 YA作品で対象傾向としてはジュブナイル寄りともとれますが、プロットは緻密で真正ミステリー。読みごたえが十分あります。お勧めできる作品です。続編も楽しみです。