実験文学です。

いわゆる実験文学の一つです。ジェイムズ・ジョイスや埴谷雄高といった実験文学や精神哲学系のお遊び小説が好きな人にはたまらない一冊ではないでしょうか。★が一つ少ないのは新装版になって文体が変わったのが惜しまれるからです。以前のほうがハンバートの偏愛的な妄執がよく伝わってきた気がします。あくまで個人的な感想ですが。 本書は決して少女性愛を容認しているわけでも推奨しているわけもありません(そのように言っている人は内容をちゃんと読んでいない人だと思って間違いないと思われます)。作品内に登場するロリータは実在する人物なのか、それとも主人公の妄想の中にだけ存在する幻なのかすらわかりません(ロー、ロリー、と人によって愛称が異なっているが本名はドロレスと一応されている。そのことからも各人によって異なる「ロリータ」という虚像が存在することが暗喩されている)。少女に性的虐待を加えている変態の話、といった感じで評している人がいますが、実際にはロリータに振り回される中年男の妄想と悲哀といった要素が強く、か弱い存在であるはずのロリータのほうが圧倒的に強い立場にあるという力関係で描かれています(以前NHKでロリータに付いて論じている番組があり、そこで作家の山崎ナオコーラさんが「ロリータ」に付いて酷評していましたが、読んでいないか実験文学を初めて読んだのかのどちらかで、どちらにしろ読解力のない人だと思いました)。作中に登場するロリータが唯一愛した男(この男の方がよほど酷い変態。ロリータに対して愛は一欠片もないが直接は手を出していない点では完全なるプラトニック)と主人公のハンバートはロリータを挟んで対を成した存在だと言えます。鏡の向こうの自分と言い換えてもいいかもしれません。こういったレトリックに溢れているところも魅力の一つです。ちなみに解説は大江健三郎先生。大絶賛されています。ジョイスを読破してしまった人には、ナボコフをお薦めします。ナボコフの入門書としてどうぞ♪