四つの署名

ワトスンの伴侶となるモースタン嬢が持ち込んだ依頼が、事件がないあまり退屈をコカインで慰めるホームズを苦境に立たせる。全てが脳内で見通せてしまうホームズにあっては珍しい展開。モースタン嬢が財宝の半分を遺贈される正当な権利を有するよう読者に思わせておいて、拘束されたスモールが物語る顛末を読むと、果たして誰の物でもなくなった結末は胸にすとんと落ちるものがある。ホームズが、いや著者が殺人犯は捕えるが、発端となった財宝の入手については断罪しないバランス感覚に感服した。