稀代の名作

衝撃、困惑、恥辱、因果、放埒、熱狂……。とうに消え去った共産主義の萌芽にあたり、いつの世になっても色あせない筆致で描いたドストエフスキーの時代を見る目に脱帽だ。現代の小説家の中に、100年たっても生き残る人はそう見あたらない。何よりも人間観察の面で、近代以降の作家で彼に匹敵する人はいないだろう。時代を超えた作家とは、よく言ったものだ。「なぜ、どうして」という読後感を味わうなら、やはり悪霊だ。ただ、ドストエフスキーを初めて読むなら、この本から始めるのはおすすめしない。なぜかって。それは読んでみれば分かる。