実用書としてよりも読み物として面白い本

著者の夏井睦は医師である。当り前だろうと思うかもしれないが、医師が医学界の常識である「傷は消毒して乾燥させる」と正反対の原則を提唱するのだからユニークな人だ。意外に思うかもしれないが、何と世界初の擦り傷の専門医なのである。 彼が提唱する原則は二つ。 (1)傷を消毒しない。消毒薬を含む薬剤は使わない。 (2)傷を乾燥させない。 特に、消毒液を使うのは傷口を熱湯消毒するのと同じという指摘にはへぇボタンを5つくらい叩きたくなった。 これだけでも実用的な知識として読む価値はあるが、本書の面白さはそれだけではない。そこから医学界の体質批判とかパラダイムシフトのメカニズムとか生物の進化にまで議論が発展する。その当否はともかく、読んでいて痛快な本である。 実用的でもあり、医学界批判でもあり、文明批評でもある。いやー、実に面白い本だ。絶対に勝って損は無い。但し、本人にはあまり会いたいとは思わない。絶対に友達にしたくない種類の人種である。さぞかしたくさんの敵を作っている事であろう。(我ながら心が狭い。)