発達障害のいまを横断的に解説した良書。

本書は、解明途上の発達障害の原因、発達障害を重篤にするトラウマなどの外的要因、自閉症スペクトラムと類似の症状を作り出す虐待の影響、発達凸凹(軽度の自閉症スペクトラム)と虐待が相乗した時の恐るべきインパクト、虐待の世代連鎖、そしてその解決が困難であれ不可能ではない事、現在試みられている具体的治療法、発達凸凹者(2E)の秘める可能性など、まさに「発達障害のいま」を横断的に解説しています。 ただ、他の方も触れておられますが、基礎知識なしで読むと難しいかもしれません。 その場合、「発達障害の子どもたち」など著者の他の本を先に読まれるとより理解しやすいかと思います。 ここで本書に登場するトラウマ治療の技法「EMDR」について少し突っ込んで触れておきます。 EMDRは優れたトラウマ治療技法ですが、トラウマの治療はどんなに優れた技法でも、表面に現れた問題の背後に隠れた更に危険なトラウマ記憶を呼び覚ますリスクと隣合わせです。 プロの治療現場であれば、防御的に忘却されて心の深層に埋もれていた古いトラウマが表面化しても、それをも治療することで完治に向かうことができます。 が、素人が安易に技法の表面だけ真似て自我を守るために無意識に封印されていたトラウマ記憶を開放してしまった場合、対処できずに状態を悪化させてしまいます。 最悪の場合、自殺につながるような事態もありえるため、臨床の資格と技能を持たない人は決して真似すべきではないのです。 EMDRは、心理臨床の専門家がきちんと学会の講座を受講して施術の資格を得て実行して初めて安全に実施可能なのです。 なお、EMDRは患者本人にとっての施術上の苦痛も少なく優れた治療法ではありますが、他の治療法と同じく万能ではありません(=中には効果が薄いケースもある)。その人にあった効果のある治療法を求めてトライ・アンド・エラーが生じるのは仕方ない側面もあると思います。