アダムとイーヴの楽園喪失についての叙事詩

海外の小説や絵画等でときに「失楽園」に触れることがあり、どんなものかと興味を持って読み始めた。叙事詩は小説に比べ余白が多く、これなら早く読み終わると思ったがすぐ壁にぶち当たった。平井正穂氏の格調高い訳文は難語が多い古風な文体で、通読するのに時間を要した。またキリスト教の基礎知識が乏しい小生にはなかなか概念が把握できない。理解の助けとなる膨大な「訳注」には只々感服するのみである。 下巻末の訳者解説によれば、『失楽園』は旧約聖書の「創世記」の記述にもとづく、アダムとイーヴの楽園喪失についての叙事詩であるという。権謀術数をはりめぐらすサタンと神との「内乱」の顛末は実にドラマチックである。一方、楽園で天使のような生活をしていたアダムとイーヴが禁断の実を食べた後互いに非難しあい、なんの実りもない時間を費やすのはとても人間臭い。ともあれ、この作品は宗教的意識がなければ理解することは難しそうだ。