全ての人に読んで頂きたい本のひとつです。 著者は東京大学を卒業してTBSに勤務した後、九州大学医学部に入り直し、精神科のクリニックを開業する一方で、既に多くの著作を持つ方です。 御自身の経験や同窓生を含む複数の医師達から取材した事実を踏まえつつ創作されたのだろうと推察しますが、立場と視点の異なる10人の医師による10の短編と云う形を取った作品集です。 10人の医師達の10人なりの人生、病気、医療、患者とその家族、同僚、関係者に対する思いや悩みが描かれており、どの短編も涙無くしては読み終わらないのですが、決して安っぽい「お涙頂戴」にならないのは、1つ1つの作品の設定に無理が無く、描写に強いリアリティがあり、強いメッセージが伝わって来るからだと思います。 全ての医師がここに描かれている様な良心を持った人物であると云う訳ではないかもしれませんが、恐らくは多くの医師達がここに描かれた様な思いを持って医療に従事されているのだと信じたいですね。 患者の立場に居る我々も、自分が診て貰っている医師達がこうした思いで日々の治療に当たっているのだと云う事を知っておくのは意味のあることだと思います。 余談ながら、大岡さんや城山さんの戦記物をほぼ全て読んでいる僕ですが、父島の話は、この本で初めて知りました。その点からも、この作品が綿密な取材に基づいて書かれた労作である事が窺い知れました。