整形外科医だった彼女が重篤な高次脳機能障害を発症して、壮絶な喪失体験を味わった苦悩の日々を綴った本です。彼女の実体験からくるエッセイですから、同じ障害で苦しんでいる方やその家族にも大変参考になる良本です。 実際に同様の障害を体験しなければ、想像力だけでは相手の苦痛が理解できません。難解な書籍を沢山読みこなした方でも、当人が体験している現実的な世界は分からないでしょう。 どんな風にものが見えるのか、どんな感覚なのか、どんなに不安で恐ろしいものなのか、それは本人しか分かりません。 この本は、彼女が医師の立場から、そして障害を持って生きることの意味を語って下さっている。健常者にとっても、生きるとはどういうことか、考えさせてくれる素晴らしい本です。 誰もが明日の健康が保障されているわけではありません。相手の立場に立ってものを考えるのは難しいし、どんなに想像力を駆使しても体験しなければ知りえないことがあります。 それをこの本は彼女自身が体験した真実を明確に教えてくれます。それでも、まだ彼女の苦悩の日々がどんなに大変だったかは、私には想像する域から出ることができません。でも、それでも、かなり近い所まで近づいて相手の立場、思いを想像して追体験できると思います。 そして、一番感動したのは、脳はまだまだ未知の可能性が満ちており、努力・訓練次第で再生への道があるということです。 年輪を重ねるごとに記憶力低下や運動機能の低下など、年齢のせいだと決めつけないで、諦めないで懸命に脳を使い新たな可能性を伸ばしていこうと意欲的に考えることができました。