厳しさ不足

第二次大戦末期。石垣島から台湾に疎開する船が米軍機の機銃掃射により尖閣列島の釣船島に漂着。九死に一生を得ながらも、しかし尊い多くの人命が奪われた悲劇を綴った。最早、歴史から忘れ去られようとしている戦中史にスポットを当てたこと自体は評価して良いが、様々な先人が著してきた文献があっての本。新しい事実と言えるのは終盤に登場する証言くらい。もちろん、戦後、時間が経って証言者が減っている現実はあるにせよ、ノンフィクションはもっと足を使い、新発見の事実を掘り下げなくてはいけない。また、証言者の談話を繰り返し記すなど文章がクドイ。門田氏はもう少しまともな文章を書く人だと思っていたが。中国の横暴、日本の外交の弱腰についても、付け足し程度で不満が残る。「おわりに」で少し書いただけでは完成形とは言いがたい。それとも全体を通して政府を批判しているのなら読解量不足だが、あながちそうでもなさそうだ。