一見、一般的な育児本に見えますが……

◆歯科衛生士「上野清香」氏による3冊目の本『賢い子を育てる 口からはじめる育児メソッド:モンテッソーリ教育×脳育×口育』(2024) は、1冊目の本『だだっこ かんしゃく 人見知り… 子どもの“困った”をなおすママの言葉かけ』(2021) と同様に、一見、普通の育児本のように見えます。 しかし読み進めていくと、繰り返し《舌癒着症》という聞き慣れない用語が出てきます。 《舌癒着症》の手術を行っている耳鼻咽喉科医によるコラム (p.85) 、小児科医による《舌癒着症》手術の体験記 (p.110) 、内科医による《舌癒着症》の症状とされるものの説明 (p.194) など。 ◆《舌癒着症》とは、一般的な医学書には見られない疾患名であり、ごく一部の者のみが用いている概念であると思われます。 《舌癒着症》に対する手術は自費診療で行われています。これは、保険診療で行われている「舌小帯短縮症」や「上唇小帯短縮症」の手術とは全く別のものです。 ◆私自身、13年前、ある医師から《舌癒着症》であると診断され、「舌」と「上唇小帯」の手術を同時に受けるように何度も勧められ手術を受けることになりましたが、その結果、鼻や鼻の穴に変形が起き、それを修復するために形成外科で新たに手術を受けなければならなくなるという大変な目に遭いました。 なぜ、鼻や鼻の穴が変形するという思いも寄らない事態が発生したのでしょうか。それは、この手術が「上唇小帯」だけでなく「顔の筋肉 (表情筋) 」までをもレーザーメスで焼き切ってしまう侵襲の非常に大きな手術であるからです。 《舌癒着症》という一般的でない疾患名のもと、このような侵襲や事後の影響の大きな施術がなされていること自体、問題であると私は思っています。 赤ちゃんや小さなお子さんに安易に受けさせてしまえるような手術ではないとも思っています。手術内容を全て知らされた上で、「それでも受けてみたい」と考える方のみが受けるものであるべきです。 ◆普通の育児本だと思ってこの本を手に取った読者の方が、それをきっかけにして《舌癒着症》と関係の深い医師につながっていってしまわないか、強い危惧を覚えます。