本作は警視庁の警察官が活躍するというシリーズであるが、発生した事件の捜査を行うという担当ではない警察官が活躍している。
作中では「犯罪被害者支援課」という、事件や事故の被害者、その周囲の家族等を支援する担当が設けられ、やがて支援範囲を被害者のみではなく加害者やその周囲の家族等へ拡げた「総合支援課」に改組される。それを踏まえ、当初は「犯罪被害者支援課」というシリーズが綴られていたが、やがて「総合支援課」というシリーズになった。
本作はその「総合支援課」というシリーズの第2作である。シリーズの主要視点人物となるのは、総合支援課に勤務する女性、柿谷晶である。シリーズの前日譚となる作品で捜査一課の捜査員として登場し、シリーズの前作から総合支援課に在る。こういう設定を承知していると、新しい作品で「遠くの知人の消息を知る」というような気分にもなるのだが、知らなくてもシリーズ各作品は愉しむことが叶う。実際、同じ作者の他シリーズに関して、設定を承知せずにシリーズの途中の作品を愉しみ、それが面白いので順次各作品を読むということもしたことが何度も在る。
本作の物語は、柿谷晶が少し若い同僚である秦香奈江と地下鉄で移動しながら、臨むことになった事案に想いを巡らせているという場面から起こる。
支援課が対応することになった事案は2歳の幼児が命を落としたという事件だった。23歳のシングルマザーのアパートに男性が住むようになって、男性が暴力的で、母子に暴力を振るうことも在ったらしい。そして2歳児が死亡し、男性が被疑者として逮捕された。女性は警察署で事情聴取ということになった。その事情聴取を行うことになっている警察署に柿谷と秦は向かっていたのであった。
2歳の息子を喪っている人を支えなければならないということで奔走する中、様々なことが明らかになって行くという展開で、最後迄眼が離せない。そして柿谷が接することになる事件関係者の生き様というようなモノが、何か考えさせられる。更に、同じ作者の他シリーズの作中人物への言及や、一部に共演する場面も在る。そして、柿谷と接点が在る神岡弁護士との挿話も入っていて、2人の関係の行方も気になる感だ。
残念ながらフィクションの中に留まらない、親が幼児の人生に幕を引いてしまうような事案は在る訳だが、本作の中で「親子関係」というようなことを少し考えさせられたという面も在った。
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