宮本常一(1907-1981)という人物は、民俗学研究を核に、様々な活動に携わった人物で、その書き綴ったモノも多く伝わっているという。申し訳ないが、この人物のことは知らなかった。本書を手にしたのは、この宮本常一の名が題名に在ったからではない。「歴史は庶民がつくる」という表現に惹かれて興味を覚えたからに他ならない。 「歴史」と言えば、誰かが書き綴った記録に依拠しながら過去の事象を考証する、解き明かすという話しになる。が、そういうモノは政治体制を設けた、支えた、換えたというような「体制側」の話しが大きな部分を占める。 こういうような「歴史」だが、それが語られている空間の中に流れた時間を生きていた筈の人達を考えてみると、政治体制を設けた、支えた、換えたというような人達は寧ろ極々限られた数であった筈で、空間と時間の中に在った、敢えて一括りの呼称を与えるなら「庶民」とでも呼ぶべき夥しい数の人達が在った筈だ。 その「庶民」とでも呼ぶべき夥しい数の人達が「如何に歩んだのか?」に着目し、考証し、解き明かそうというような事柄を端的に言うなら「歴史は庶民がつくる」ということになるのであろう。 この「庶民がつくる」という「歴史」を考証する手段として、宮本常一は「民俗学」という方法を用いた。 「民俗学」とでも聞けば「口承文芸」というようなことを思い出す。何処かの地域で、代々口伝で伝わっている物語のようなモノを聞書きするようなことをし、それを読み解いて「人々の心情」、「心情の移ろい」というようなことを考証する訳である。 宮本常一は「口承文芸」というようなこと以上に「モノ」と「使い方」と「暮らしの変化」というようなことに着眼し、それに関係する聞書きのような調査を重ねて考証した。 大変に興味深い。