柳の下の二匹目のゾンビ
本当に作者は「梨本宮伊都子妃の日記」や「徳恵姫」を読んで書いたのか?、と思えるほどに古臭い筋書きに加えて、種本をそのまま引き写して書いている。要約を「小説」と言うらしい。金一勉の「李王垠殿下の生涯」そのままな赤瀬川隼の「青磁のひと」みたいなので、もし作者は外間守善の「私の沖縄戦記」などを読んで沖縄戦の小説を書いていたら、そのまま金鍾碩(日原正人)中尉が小説に出て来そうだ。南労党員として粛軍で銃殺された唯一の日本陸士出身者だからふさわしい題材ではないか?
張赫宙の「秘苑の花」を読んでいれば気がつくだろうに、昭和になってからの英王夫妻の訪欧時に高羲敬伯爵(「高事務官」と出て来る人)が出て来ないし、彼は昭和9年に故人となっているのを著者は知らないらしいので昭和20年まで李王家東京邸で「勤務」している事になっている。昭和20年時点では高羲敬の孫が襲爵しているけれど。まるで戦時中のシーンで高羲敬が出て来るフジテレビの「虹をかける王妃」だ。
作者は「流れのままに」と「歳月よ王朝よ」に出て来る韓国で方子女王に日本語で話しかけた女性をヒントにしたらしい「もう1人のヒロイン」に配して「日帝の悪辣な朝鮮支配と戦後責任」を書きたいらしいが、駆け足過ぎる上に何もかも書きたいのか、羅列してカタログみたい。真木よう子みたいな何も知らない読者には衝撃的かもしれないが、何も感じなかった。
こう見ると単行本の完成までに半年くらいしか時間がなく、趙重九と面識があって彼から参考文献を借りて話も聞いた利点はあったにしろ、張赫宙が書いた「秘苑の花」を越える作品は誰にも書けないという認識は変える必要はなさそうだ。
他のユーザのコメント