心にじん…と沁みるものを残す本

筆者の精神病棟入院前後の経験を経て、見て聞いて思い感じてきたことが浅くなく深淵に込み入りすぎずに、読みやすく丁寧に描かれてあった。多くのキリスト者の本にある信仰を前提とした励ましの内容でなく、むしろ筆者という第一人称の目線にこだわった回想録である。全ての話題が予め計算されたように繋がっているわけではないし、自分ではどうにもならないことも含めて描かれている様は人生という物語のリアルさを感じさせ、穏やかな文体で統一されながらも各章ごとの色が感じられるのは人生が一言では語れない様子を表しているようで新鮮だった。 精神病棟での生活や筆者の治療の過程など内容面でも心打たれるものがいくつもあるが、そこはぜひ本書を手に取り読んでいただきたいので割愛する。 自分も自己や社会、人生に対して思いを馳せがちな人間であるが、この筆者ほど上手く捉えることは出来ないにせよ、与えられた命の続く限り自分の人生を慈しみ味わっていこうと思わせられる一冊だだった。